ひとの記憶

幼稚園がはじまって、初めの頃は少し戸惑うことも多かれ少なかれあったが、

園生活にも馴染んできて、毎日幼稚園に行くことを楽しみにしている。

 

そしてたくさんのことを覚えてくる。

先生がしてくれたお話やおうたのこと、お友だちのこと、

園での生活のこと…。

絵もたくさん書くようになった。

くるま、とり、おともだち、はーと、おはな、にじ、たいよう…

絵に書きたいことが、家で過ごしていたときよりもたくさんたくさんあるようだ。

だいすきなお姉さんお兄さんの真似をした文字みたいな形のあるものも。

 

こどもの吸収力は本当にすごいなぁを眼を見張る。

 

 

すこし慣れてきたとおもっていたある日、

たまたま「うみのおばあちゃん」の話題になった。

「長女ちゃん、チョコ持ってきてくれたんだよね。嬉しいな。」

 

長女はうんうん、そうだよーと頷きながらも

なんだかパッとしない表情で何かを考えている。

 

すると海のおばあちゃんについて

「長女ちゃんね、前はたくさん知っていたんだけど、

今は少しだけ知ってるの。」と教えてくれた。

 

 

 

ああ、そっか。

吸収すればするほど忘れることも当然あるよねぇ…。

引越しや入園や変化が大きすぎたかな…。

 

大きくなってからも胎内記憶がある人もいるらしいと聞いたことはあったけれど、

長女の脳細胞たちは、どうやら忘れていこうと判断したらしい。

 

哀しいことではない。

毎日を楽しく生きるため、成長するために必要なことなのだろう。

 

長女が「少しだけ知ってる」と言葉を選んだことからも、

「忘れちゃった」とは言いたくなかったんだろうなという気持ちが伝わってきた。

忘れたいわけじゃないんだね。

覚えているときに話してくれて、本当に良かった。

大事なお話。話してくれてありがとう。

 

子育てしてから時の流れについてばかり考えている気がする。

大事に過ごそう。